9. 「投入と見返り」の思い込みからの脱却
現代社会において、多くの人が「仕事に費やした時間や努力は収入に比例するはずだ」というよくある誤解に陥っている。これは僕自身もキャリアの初期段階で囚われていた思考の枠組みだ。
この思考パターンのせいで、以前の僕は職場で挫折感や不条理さを感じることが多かった。「自分にはちゃんとした学歴があるのに、なぜあいつの方が僕より稼いでいるんだ」「こんなにたくさんコードを書いているのに、なぜ評価が上がらないんだ?」といった考えが頻繁に頭をよぎっていた。
まず、なぜ「努力すれば相応の見返りがあるはずだ」という考えが生まれるのか? 僕には主に次の2つの理由があると考えている。
- 学校教育:幼少期から僕たちの評価基準はテストであり、その直線的な思考をそのまま職場に持ち込んでしまうこと
- 価値観の刷り込み:誰もが「努力すれば成功する」と言い、費やしたコストと見返りをイコールで結びつけてしまうこと
しかし、市場や経済システムの仕組みはそうではない。収入は主に「どれだけの価値を生み出したか」によって決まる。
- どれだけの実質的な利益をもたらしたか
- 解決した問題の規模と重要性
- 代替性の低さ(替えが利かないかどうか)
- スケーラビリティ(拡張性)を秘めているかどうか
僕たちが子どもの頃から教え込まれてきたことと、市場が実際に機能する仕組みはまったく異なる。「投入した時間や努力に見返りが釣り合わない」という苦境から抜け出すには、マインドセットを変える必要がある。
まず、自分の費やした労力や時間で成果を測るのではなく、**「より多くの価値を生み出すこと」**を中心軸に据えるべきだ。これには自分の影響力を発揮することも含まれる。例えば、自分の持ち場にあるタスクをこなすだけでなく、チーム全体の生産性を向上させる方法を考えてみることだ。
僕自身、過去に似たような経験がある。自動デプロイを導入してデプロイフローをボタンを1回押すだけに簡略化したり、ファイルのアップロード機能を設けてハードコードされていた文言を管理画面から即時反映できるようにし、エンジニアがコードを修正して再デプロイする手間を省いたりした。
職場で長く過ごしていると、多くのプロセスやタスクには共通点があることに気づく。自分の担当タスクだけをこなす開発者にとどまるのではなく、レバレッジが効くような働き方を選択することもできるのだ。
社会人になりたての頃の僕は、些細な問題に追われて無駄に忙殺されていた。既存のフローを改善しようと大量のコードを書いたものの、チームから認められずに酷く落ち込み、上司からも「コードだけに目を向けていては視野狭窄に陥りやすい」と注意された。その後、僕は問題へのアプローチを変え、チーム内で積極的に発言や議論を行い、合意形成を図りながら、真に重要な問題の解決に注力するようにした。
その結果、上司からの評価を得てテックリード(Tech Lead)の機会を掴むことができた。企画側とのコミュニケーションを担当し、いくつかの重要機能の開発とリリースを主導した。また、サーバーをゼロから構築して従来のランディングページ(LP)制作フローを改善し、企画側がより柔軟なカスタマイズを行え、SEOも強化できるように自ら働きかけた。こうした貢献により、僕の給与は大幅に伸びることとなった。
結論
現実を受け入れよう。市場のメカニズムはそのように動いているのだ。不公平だと不満を漏らすよりも、どう適応して自分の強みを見出すかを考えるべきだ。固定観念に縛られず、異なる働き方や行動を積極的に試してみよう。
自分が提供できる価値を理解できれば、特定の会社に自分を縛り付ける必要もなくなり、自分の強みを発揮して、自分にアドバンテージがある軌道を進むことに集中できるようになる。
これは決して簡単な意識改革ではない。当時の僕と同じように、「誰も自分の努力を見てくれない」と感じたり、周囲の同僚に不満を抱いたりすることもあるだろう。しかし、思考パターンを変える覚悟さえあれば、そこには全く違う世界が待っているはずだ。
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