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会社のフェーズの重要性

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「あそこはスタートアップだ。」

プレシードを調達した2人のチームもスタートアップなら、シリーズBを調達してもなお資金を燃やし続けている100人規模の会社も自らをスタートアップと名乗る。同じ「スタートアップ」という呼び名でも、その内側の世界はまったく異なる。

スタートアップであっても、フェーズによってその姿は完全に別物になる。そもそも「スタートアップ」という定義自体が曖昧すぎるのだ。「自分は大企業に向いているか、それともスタートアップに向いているか」で判断するくらいなら、会社のフェーズで評価してみるのがいいだろう。

そうすれば、その会社に入るべきかどうかを判断するための、より明確な指標が得られるはずだ。規模の大小よりも、会社が現在どのフェーズにあり、何によって生き延び、どう成長し、何が最大のボトルネックになっているか。それこそがチームのカルチャーや労働環境の雰囲気に直結する。

なぜ気にする必要があるのか

同じ「エンジニア」という肩書きでも、フェーズの異なる会社では仕事内容がまったく異なる。模索期のエンジニアは、今日はバックエンドを書き、明日はランディングページを修正し、明後日はクライアントとの会議に出るかもしれない。一方で成熟期のエンジニアは、3ヶ月間ひとつのサブシステムのパフォーマンス最適化だけに専念することもある。

同じ「PM」でも、検証期における成功基準は「買ってくれる人がいるかどうか」であり、成長期のPMの成功基準は「スケールできるかどうか」だ。

フェーズごとに「良し」とされる定義はまったく違う。会社のフェーズを正しく認識していなければ、仕事に対して非現実的な期待を抱いてしまいやすい。

  • 自分は開発者なのに、なぜ開発と関係のない雑用ばかりやらされるのか?
  • リファクタリングをしたいのに、なぜいつも上層部に却下されるのか?
  • ボタンをひとつ修正してスタイルを直したいだけなのに、なぜ4つも5つも承認プロセスを通さなければならないのか?
  • 技術的負債が溜まり続け、コードのメンテナンスが苦痛でたまらない

プロダクトをより良くしたいと思っているのに、何をやっても裏目に出るように感じられ、それが長く積み重なった結果がバーンアウトと退職だ。「みんなで一丸となって戦う」という響きは美しいが、資本主義の仕組みの中では、自分などいつでも代わりの利く駒に過ぎない。

会社が混沌としていて制度がないと感じるなら、それは単に会社がまだそのフェーズにいるからかもしれない。逆に制度やプロセスが多いからといって成熟しているとは限らず、単に硬直化が始まっているだけということもある。

4つのフェーズ

以下は僕自身の観察をまとめたものだ。会社には各フェーズに応じた特徴があり、それらの特徴を使ってその労働環境が自分に合っているかどうかを判断できる。

Runway 營收 支出 轉折點 摸索期 驗證期 成長期 金額 時間

横軸は時間、縦軸は金額だ。SaaS型のスタートアップにおいて、唯一のゴールはただひとつ、Growth(成長)である。

具体的には、ランウェイが尽きる前に転換点(変曲点)を見つけ、売上を指数関数的に成長させることだ。自分のすべての行動やアウトプットは、この目標にアラインしていなければならない。

以下の記述はすべてこの主軸に沿ったものだ。

模索期

この時期の会社は、まだ市場を探し、テーマを探し、方向性を模索している。創業者がすべてを主導し、今日言っていた「A」が明日には「B」に変わるような朝令暮改も日常茶飯事だ。安定したプロセスはなく、多くのことが試行錯誤の段階にある。このフェーズで重視されるのは方向性を見出すことであるため、いかに素早くイテレーションを回し、素早く失敗し、重要なデータを手に入れるかが鍵となる。

朝令暮改はこのフェーズではよくあることだ。立ち上げ初期のスタートアップはそもそも素早くピボットすべきであり、最も本質的な問いは**「僕たちは一体どんな課題を解決しているのか? それを求めている人はいるのか?」**という点にある。

このフェーズで求められるのはスピードとイテレーションだ。生まれたコードの多くは、生み出された瞬間から捨てられる運命にあると考えていい。この段階で手厚い福利厚生や休暇制度を期待するべきではない。

補足として、模索期にはAWSを使わないことを強くおすすめする。プロダクトのイテレーション速度を引き上げてくれるPaaSは他にいくらでもある。

このフェーズは、カオスを楽しみ、0から1を作るのが好きな人に向いている。明確な分業やSOP(標準作業手順書)を求める人にとって、このフェーズは苦痛でしかないだろう。

創業者の価値観や仕事の進め方が、会社やチームのカルチャーに極めて大きな影響を与える。

模索期の会社にジョインするリスクは非常に高い。経験を積むため、あるいは会社の目指す方向に強く共感し、一緒に戦いたいという理由がない限り、僕はこの時期に入ることをおすすめしない。理由はいくつかある:

  • 立ち上げたばかりで調達額もそれほど多くなく、ランウェイが長くない状況下では、自分のあらゆるアウトプットが厳しく精査される
  • 正社員として入った場合、給与水準は市場相場より低くなる可能性が高く、その割にやるべきことは山積みになる
  • プロダクトの方向性が変わり続け、要求も変わり続けるため、右往左往させられるかもしれない
  • 非常に高いオーナーシップが求められ、多くのことや制度を自分自身の手で推進しなければならない

これほど多くのプレッシャーを抱え込む以上、高い強度の労働環境でバーンアウトしないためにも、あらかじめ「自分は一体何のために頑張っているのか?」を自分自身に問い直しておくべきだ。ここにある条件はすべて上位互換が存在する。例えばシリーズBのスタートアップやTier 1の外資系企業に入っても、極めて高い仕事のプレッシャーと強烈なオーナーシップが求められる環境を同様に体験できるが、少なくともそれに見合う給料は払ってくれる。

逆に、自分を突き動かす強い動機がすでにあるのなら、勇敢に飛び込んでみるといい。その経験は、将来さらに困難な挑戦に直面したときの強力な後ろ盾になるはずだ。

私を殺さないものは、私をより強くする

検証期

クライアント(ユーザー)がつき始め、売上が立ち、お金を払ってくれる人が現れるが、まだそのモデルが再現可能かどうかは定かではない段階だ。成果の多くは創業者や少数のコアメンバーによる力業で支えられており、プロダクト、営業、デリバリーの境界線がしばしば混ざり合っている。

この時期は模索期よりは少し安定するが、最も重要なのはPMF(プロダクトマーケットフィット)を見つけることだ。これはビジネスとして成立するのか? この成功事例は再現できるのか?

多くの会社はクライアントがついたことで「もう安泰だ」と勘違いするが、実際はファウンダーの営業力がずば抜けて高いだけというケースもある。創業者が一人で営業を背負い、一人で交渉し、数件の案件を獲得した。一見すると市場が検証されたように見えるが、実際には再現可能なビジネスモデルからは程遠い。

このフェーズにおける最大の課題は、やはりPMFを見つけることだ。単にクライアントがいるかどうかだけでなく、さらに一歩踏み込んだ問いに答えなければならない。これは事業として成り立つのか? この成功パターンは再現可能なのか? 創業者自身の手を離れても、この仕組みは回り続けるのか?

創業初期は Do Things That Don’t Scale(スケールしないことをしよう)に集中すべきだと言われるが、成長期に向かうにあたっては、再現性がありスケール可能な成長手段を模索し始めなければならない。

僕が考える重要ポイントは以下の通りだ:

  • 前のフェーズで試行錯誤と直感によって蓄積された経験を、徐々に制度、プロセス、手法として整理し、真に再現可能なモデルを見つけ出すこと
  • 検証を感覚だけに頼るのをやめ、データに基づいて語り始めること
  • 単発の成功と、スケール可能な成功を区別し始めること
  • 少数のキーパーソンへの依存度を下げる工夫をすること。成長がファウンダーやコアメンバー個人の腕力に紐づいている限り、会社はまだ真の意味で初期フェーズを脱していないからだ。

このフェーズでは以下のような特徴が見られる:

ロールの境界線が極めて曖昧。名目上はエンジニア、PM、デザイナーであっても、実際には本業以外の仕事も日常的にこなす。機能を実装しながら営業の商談に同席し、クライアントの要望に対応しながらプロセスのドキュメント整理を手伝う。多くの物事をまだ綺麗に切り分けられない。

要求の変更が依然として頻繁。方向性は絞られてくるものの、それでも頻繁に変わる。今日はA社のために作った機能も、2週間後には本当に買ってくれるのがB層の顧客だと分かり、優先順位がまるごと入れ替わる。大口顧客のために機能をカスタマイズしなければならないこともある。初期よりは落ち着いたと感じられるものの、「安定」にはまだ程遠い。

まずは動くものを作ることが最優先。これは品質を軽視しているわけではなく、今の会社にとっては「それに投資し続ける価値があるかどうか」の方が重要だからだ。これが多くの開発者にとってコンフリクトの原因になる。

技術的負債の蓄積。模索期に残された負債が、この時期になると牙を剥き始める。スピードのために急造したものが、クライアントの増加、要求の複雑化、データ量の増大によって、メンテナンスコストを急速に押し上げる。これもまた開発チームと経営陣の間で衝突が起きやすいポイントだ。

成長期

再現可能な顧客層と売り方が見つかり始めたものの、組織の体制がまだ完全には追いついていない段階だ。ヘッドカウントが増え、中間管理職が必要になり、採用、協業、コミュニケーションのコストが急速に跳ね上がる。課題は「少数の成功」をいかに「安定した成功」へと変え、同時に事業の拡大を支え切るかへとシフトする。

世の中の多くの人が身を置いているのは、まさにこのフェーズの会社だろう。内部では事業の拡大を進めながら、同時にあちこちの穴埋めに追われることになる。

プロダクトが成長し、組織が大きくなり、売上も伸びているかもしれないが、技術、プロセス、管理、コミュニケーションのコストも同時に膨らんでいく。

以前の小さな規模なら耐えられた問題が、このフェーズになるとすべて拡大されて表面化する。技術的負債が開発スピードを削ぎ始め、マネジメントの課題が組織の運行に影を落とす。会社は、一握りの優秀な個人の力だけに頼るのには限界があることを痛感し始め、徐々に「人」依存から「仕組み」による運営へと舵を切らざるを得なくなる。

  • 社員が増える。社内政治への対応が必要になり、会議、プロセス、ドキュメントが増え始める。
  • 部門間連携(クロスファンクショナルな協業)が増える。ステークホルダーが増加し、コミュニケーションコストが目に見えて増大する。
  • 要求は「ただ作る」だけでは済まなくなる。単に物を作り上げることだけでなく、安定してデリバリーできるかどうかが求められる。

成熟期

成熟期の会社は、通常、それまでの激しい不確実性をすでに乗り越えている。

ビジネスモデルは比較的安定しており、市場でのポジションも明確で、組織の分業、プロセスの制度、マネジメントの枠組みもあらかた整っている。会社はもはや日々「生き残れるかどうか」を証明する必要はなく、方向性を手探りしながら成長を追うような状態からも脱している。

会社が大きく安定すると、プロセスや制度は秩序をもたらす一方で、慣性をも生み出す。意思決定ラインは長くなり、リスク回避の意識が強まる。かつては素早く推し進められたはずの事柄に、より多くの調整や評価が求められるようになり、社内の摩擦によってエネルギーを消耗しやすくなる。

僕はこの状態を、成熟期において避けて通れない難題だと呼んでいる。

大企業で働いたことがある人なら分かるだろうが、外から見れば華やかに見える会社のほとんども、内部の混沌、抽象さ、カオスぶりは想像をはるかに超えている

明確な分業。ロールの境界がはっきりしており、プロセスが整っている分、仕事を進めるには多くの社内手続きを踏む必要がある。

長い意思決定ライン。多くの事柄において何段階もの承認が必要になる。例えば、新しいサーバーを1台立ち上げるのに2週間の申請期間が必要だったり、本番環境のデータベースへのアクセスには厳格な監視が求められたりする。

社内政治。リソースの奪い合いが生じ、自分のやりたいことを推進するのがより難しくなる。「作れない」のではなく、「社内で通せない」ことがハードルになるケースが多い。

フェーズが違えば、適した人材も異なる

このマッチングは、個人の能力云々よりもずっと重要だ。

模索期は、カオスを好み、自ら責任を引き受けられる人に向いている。検証期は、生じた穴を埋め、素早く仮説検証を繰り返せる人に向いている。成長期は、制度を作り上げ、他部門と円滑に連携できる人に向いている。成熟期は、最適化、ガバナンス、効率改善を得意とする人に向いている。

フェーズごとに特徴が異なるため、自分に合わないフェーズの会社に居続けることは、往々にしてバーンアウトの引き金になる

僕自身もこのミスマッチを経験したことがある。

成長期の会社ではとても居心地がよく、自分の価値を発揮できていると感じていた。しかし、模索期の環境に移った途端、過去の経験の多くが通用しなくなってしまった。直面している問題の本質がまったく異なり、会社が重視しているポイントもまるで別物だったからだ。逆もまた然りで、カオスの中では水を得た魚のように動ける人が、制度化された環境に行くと息が詰まり、力を発揮できなくなることもある。

結局のところ、本質はすべて認識のズレにある。会社がそのフェーズにおいて「A」に集中すべきタイミングなのに、自分は「B」をどう最適化するかばかりを考えてしまっているのだ。

会社はまだ模索期にあり、最も必要なのは要求の迅速な検証と素早いイテレーションであるにもかかわらず、自分の頭の中では「アーキテクチャを綺麗に切り離しておくべきか」「プロセスを先っちり定義すべきか」ばかりを考えてしまう。あるいは、会社がすでに成長期に入り、最も求められているのがチームの協業、制度化、予測可能性であるにもかかわらず、自分はいまだにスタンドプレーの手法で問題をねじ伏せようとしてしまう。

だからこそ、能力不足という単純な話ではないと僕は思うのだ。

必死に努力しているのに一向に成果が出ない状態が続くと、人は次第にすべての問題を自分自身のせいにしてしまい、最終的に「自分は実は大したことがないんじゃないか」という結論に至りがちだ。

しかし前述の通り、会社のフェーズが持つ特性をあらかじめ理解していなければ、自分が得意なことと会社が求めていることとがマッチするとは限らない。水を得た魚になれるかどうかだ。ただし、それが本当に環境のせいなのか、それとも自分が困難な課題から逃げているだけなのかは、冷静に見極める必要がある。

この構造さえ理解してしまえば、自分のキャリアを選択することはぐっと容易になるはずだ。

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