新創に CTO は必要か?
# 雑談僕らは会社を2種類に分けられる。
- Deep Tech:技術的ブレークスルーを追求し、重大なグローバル課題を解決するために、大量の研究開発投資、開発期間、資金を必要とする領域。例えば医療、気候変動、AI などだ。ここでいう AI はアプリケーション層ではなく、実際にモデルを開発・学習させる側を指す。
- 産業向けソリューション:特定の業界が抱える課題を解決するソリューションを持つこと
台湾の新創企業の大半は、産業向けソリューションを主軸としている。
この前提に立つと、初期段階で生き残るうえで、機能をどう実現するかよりも重要なのは、その産業をどれだけ深く観察し、当事者たちの痛みがどこにあるのかを理解しているかだ。
特に AI が発展する時代では、機能そのものを実現するハードルはかつてないほど低くなっている。僕は、より希少なのは頭の回転が速い PM だと思う。本当に優秀な PM なら、すでに AI ツールを使って自分で PoC を作れる。
これが、僕が CTO や上級技術責任者の採用が相対的に難しいと考える理由でもある。
- 技術レベルが十分に深いことを期待する一方で、会社の経営戦略に貢献できるだけの産業知識も求めたくなる
- CTO として入社しても、初期は大量の開発業務に関わる必要がある。プロダクトの段階によっては、うまく役割転換できるとは限らない。(例えば、実行重視から戦略重視へ、あるいは多方面への試行錯誤からデータ駆動へ)
- 国内新創への参加は、投資対効果が相対的に低い
なぜ投資対効果が相対的に低いと言うのか。CTO という職位で見ると、1桁%の SO を得たとしても、何年にもわたる不確実性、株式の希薄化、市場水準を下回る給与を受け入れなければならない。たとえ最後まで持ちこたえて EXIT できたとしても、報酬をならしたら必ずしも得とは限らない。
新創の業務には、あまり歓迎されない仕事がたくさんある。自ら最前線に出てカスタマーサポートをやること、1日でイベントページを作り上げること、ビジネスロジックが絶えず変わること、カスタマイズ要望、雑務の数々、顧客の割り込み対応。リソースが不足している初期には、チームの初期メンバーは大量の仕事をこなさなければならない。僕はこうした曖昧な役割分担が好きだが、率直に言えば、開発者が追い求めたい環境だとは限らない。
こうした環境では、会社や業界そのものに対する強い信念や熱意、自分自身で実現したい人生の目標がなければ、居続けるのは難しい。技術的負債の蓄積、プロセスの不明確さ、制度の未整備は、開発者の意欲を自然に削いでいく。
上述の通り、立ち上がったばかりの新創企業であれば、機能面は経験ある開発者1人と、頭の回転が速い PM 1人がいれば、市場検証を始められる。必ずしも上級管理職は必要ない。
とはいえ、上級管理職が不要でも、意思決定は必要だ。創業者自身に十分な技術背景がない場合、技術アーキテクチャを全体として把握するのは難しい。特に僕は、最初に計画しておくべきで、後から変えるとコストが高いものがあると思っている。
- データベース設計:schema や index をどう設計するか、ビジネスロジックに応じてどう分割するか。データが入ってから作り直すのは難しい。あえて NoSQL を選んで柔軟性を保つ手もある
- 基盤インフラ:業務ロジック、情報セキュリティ、デプロイ方法を含む
- 採用:初期チームが開発プロセス全体の方向性を決める。新創企業にとって、不適任な人材を採用するコストは高い
- Tradeoff:何をやるべきか、何を一旦捨てるべきか
僕が思い出すのは、海外に Fractional CTO という言葉があることだ。正社員として雇うのではなく、その業界に精通した CTO をプロジェクト単位でアサインする。
初期のアーキテクチャ設計、採用、開発プロセス、チーム育成などを支援することで、採用後のミスマッチのリスクを避けられるし、人が見つからない悩みも解消できる。しかも、「普段はあまり使わないが、いざという時には不可欠」という空白期間を抱えなくて済む。